脂肪肝のための食事 食事療法のポイント1分理解



脂肪肝の食事療法の目的は、「肝機能の回復」


いまや生活習慣病の代名詞的存在となった「脂肪肝」。脂肪肝は、肝臓に脂質(中性脂肪)が蓄積してその機能が損なわれる病気です。


そのほとんどが無症状なため、健康診断や人間ドックなどで指摘を受け、はじめて気づくケースが大半のようです。

(なお脂肪肝の概要については、関連サイト「脂肪肝の症状と治療 食事療法と運動」もあわせてご覧ください。)


しかし無症状とはいえ、放置したまま病状が進行した場合は、肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患が待ち構えています。加えて脂肪肝は、れっきとした「肝臓がんの原因のひとつ」でもあるのです。

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動脈硬化・高脂血症・糖尿病・高血圧など、一層深刻な別の病気につながるリスクも大きく高まることになります。

逆に言えば、気づいた段階で適切に対処することで、症状が深刻化することを食い止めることができるのです。

脂肪肝を甘く見ず、「きちんと治療すべき病気」という認識を持って、生活習慣の改善に取り組むべきです。


治療の基本は、「食事療法」と「運動療法」が二本柱です。


ここでは食事療法を解説しますが、脂肪肝の食事療法の目的を一言でいえば、「肝機能の回復をはかること」となります。


実現の具体的方法は、三つのポイントで考えるとよいでしょう。

すなわち、


の三点を重視した食事内容を、心がけるようにすることです。

特に肝臓においては、食事療法のほうが運動よりも効きやすいとされます。


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大敵はアルコールと動物性脂肪


食事 食事療法



脂肪肝の主な原因とされる「肥満」「アルコール」「糖尿病」の三つのうち、アルコールと肥満が全体の原因のおよそ7割を占めています。


一日60グラム以上(一日換算で3合以上)のアルコールをとり続けた場合、およそ5年でアルコール性肝障害に陥るといわれており、いずれにせよ肝臓に過剰な負担をかけることは、間違いありません。


アルコール性脂肪肝といえば「酒飲みの男性」をイメージしがちですね。しかし健康診断の肝機能検査で使われるγ-GTP等の数値は男女差が大きく、女性の早期異常が見逃されやすいと言われます。

日本人はもともと肝臓でアルコールを分解する酵素のはたらきが弱くダメージを受けやすいのですが、アルコールをたしなむ女性も増えてきている昨今、たとえ健康診断の数値が基準値に収まっていても、要注意です。

アルコール性・非アルコール性脂肪肝を問わず「アルコールは原則として禁物」であることを、よく頭にたたき込んでおきましょう。


もちろん仕事上のおつきあいその他、アルコールを避けて通れない場合もきっとでてくることでしょうから、そのときは多少のおつきあいもやむを得ないかもしれません。

ただし最終的に脂肪肝を治すためにも、まずは禁酒を視野に入れた「断酒」からスタートするようにしましょう。


たとえば、「一日飲んだら、次の三日間はアルコールを入れない」というように自分なりにルールを決め、アルコールから遠ざかる期間を少しづつ増やすようにします。

通常のアルコール性脂肪肝なら、2~4週間程度の禁酒だけでほぼ完全に治りますので、まずは数週間程度はグッと我慢して、「肝臓にたまった脂肪を使い切ってしまう」ことをおすすめします。


脂肪肝によくないアルコール以外の食品群としては、バターや菓子類、肉の脂身などがあげられます。

バターなどのいわゆる「動物性脂肪」は体脂肪になりやすく、また菓子類に含まれる砂糖は中性脂肪の合成を促しやすいため、過度の摂取を避けるようにします。

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脂肪は、肝臓にたまった中性脂肪を消費する観点からその摂り過ぎに注意が必要なものの、栄養摂取のバランスを崩しかねないほどの極端な制限は避けるようにします。


脂肪の性質を踏まえながら、一日のカロリーの2割程度は脂肪から摂るようにします。


食事からの摂取する脂肪のバランスは、動物性脂肪(魚類):動物性脂肪(肉類など):植物性脂肪=5:4:1 の割合が最適でしょう。


油の使用量は、1日10g程度を上限にします。中性脂肪を増やす方向に働く「飽和脂肪酸」の多いバターやラードを使うのを控え、血中の悪玉コレステロールを下げる「不飽和脂肪酸」を多く含むオリーブオイルや大豆油に切り替えるのがよいでしょう。


ちなみにコーン油・サフラワー油・ごま油などの「油類」は、アルコール性肝障害によくないとされる「リノール酸」を多く含むため、調理において量を多く使わないようにします。

脂肪肝によいとされるセサミンやアルギニンなどを含んだ「ごま」そのものは積極的に摂取したいところですが、かといってごま油の摂り過ぎはなるべく控えたいところです。


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脂肪肝の食事~たんぱく質・ビタミン群・食物繊維


豚肉



一日に食事から取る摂取カロリーのバランスは、炭水化物:たんぱく質:脂肪=5:3:2 くらいを目安に調整するとよいでしょう。


まず炭水化物糖質とほぼ同じと考えてOK)ですが、余ったブドウ糖は中性脂肪に合成されて肝臓に蓄えられます。

糖質の過剰摂取が続くと、肝臓での中性脂肪の蓄積が進んで脂肪肝になります。さらに脂肪肝が放置されると、やがて「非アルコール性脂肪肝(NAFLD、ナッフルディー)」になります。

したがって炭水化物の摂り過ぎに注意が必要ですが、昨今話題のいわゆる「糖質制限」は避けたほうがよいでしょう。

糖質を極端に減らして一時的な体重減少が見られても、満腹感が得られにくくなるため、代わりにタンパク質や脂質をつい摂りすぎることになります。


そうなると、全体としてエネルギー過剰になるだけでなく、コレステロールの合成を促す「飽和脂肪酸」の摂取量も増えるため、生活習慣病のリスクを高めることにもなります。

脂肪肝改善の観点からは、一日のエネルギーの半分程度を炭水化物(糖質)から摂りつつ、食事時のアルコールや間食を控えるほうが効果的でしょう。

ちなみに果物類はビタミンの摂取には良いのですが、果糖の血中吸収が良すぎて脳の満腹中枢を刺激しないため、空腹感が引き起こされ食べ過ぎにつながりがちです。一日の糖質量のバランスを摂るためにも、フルーツは少量にとどめておきましょう。


是非ともきちんと摂取したいのは、肉・魚・豆類などに含まれる「良質のたんぱく質」です。

たんぱく質は肝細胞の生成・再生に必要ですし、また肝臓内の代謝に必要な酵素などもたんぱく質からできているため、肝臓系の病気においては良質なたんぱくの食事をとることが基本とされています。


さらに摂取したたんぱく質を十分に活かすため、「ビタミン・ミネラルの摂取」も重要になります。


なかでもビタミンB1B12の働きが大きいとされますが、個々の成分に着目して摂取するよりビタミンB群を多く含む食品、たとえば豚肉・鶏肉・魚介類・レバーなどからまとめて摂取するほうが実際的でしょう。これらの食品は同時に良質のたんぱく質も多く含まれているため、一石二鳥と言えます。

また抗酸化作用を持つビタミンEは、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の治療でも第一選択薬として使われていますが、炎症の改善効果に優れたビタミンです。


ちなみにビタミンは水に溶けやすく、また熱によっても失われやすい性質があるため、摂取量が欠乏しないよう、必要に応じてサプリメントも併用したいものです。


キノコ類


脂肪肝対策として摂取を心がけたい他の食材は、キノコ類、そしてシジミに代表される貝類です。


とりわけ、良質のたんぱく質とミネラル類をバランスよく含んでいるシジミは、味噌汁やシジミ汁のかたちでとるとよいでしょう。

シジミは、上で述べたビタミンB12を多く含む食品としても知られています。


意外に思われるかもしれませんが、食物繊維を多く含む食べ物をとることも対策としては大切です。

食物繊維は肝臓のエネルギー摂取が過剰になることを防ぎ、また糖質や脂質の吸収を遅らせる働きもあるからです。

食物繊維は野菜や海藻・キノコ類の他、納豆や豆腐などの大豆加工品、こんにゃくなどに多く含まれています。


バランスの採れた一日3食の基本型としては、「主食(ごはん・パン・麺類)1品」+「主菜(魚・肉・卵・大豆類)1品」+「副菜(野菜・きのこ・海藻類)2品(または、副菜1品+汁物)」が、1回のセットになります。

それぞれ適量の盛り付けを心がけつつ、塩分の過剰摂取を避けるために汁物は1日1回程度に抑えます。

なお主食や主菜を2品以上組み合わせるのは、摂取エネルギーが過剰になりやすいので避けたほうがよいでしょう。

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食事・サプリで摂りたい栄養素~脂肪肝の改善


サプリメント



最後に、脂肪肝の改善によいとされる主な栄養成分を、いくつかあげておきます。


いずれも食事から摂取できるものは食事を中心に、とれない場合はサプリで補うようにすることが基本となります(カッコ内は成分が多く含まれる食品群)。

グルタチオン・メチオニン・タウリン・アルギニンは、いずれもアミノ酸に属するものです。


ごまに含まれるセサミンは、強い抗酸化作用・脂肪の分解作用を持つ「ゴマグリナン」に最も多く含まれる成分のひとつで、アルコール分解を促進する働きで知られています。肝臓で効果的に活性酸素を除去する効果も併せ持ち、脂肪肝を予防します。

セサミンはサプリメントとしてもおなじみですが、ビタミンEと同時に摂ることにより、さらに効果が高まるとされています。

他にも二日酔い・悪酔い防止のサプリやドリンクとしてよく知られているものに、「ウコン(別名、ターメリック)」があります。


ここで強調しておきたいのは、脂肪肝を解消する「単品の」食品やサプリメントは現時点で存在せず、これらはあくまで「不足する成分を補って、身体の全体的なバランスを整えるサポート役」に過ぎないという事実です。


単品の食品やサプリに頼りすぎることで、精密な有機体である私たちの体の、肝臓以外の他の機能に影響が出ない保証は何もありません。いわゆる「副作用」と言うやつです。

私たちの身体に個人差がある以上、単一成分の過剰摂取によって、何らかの副作用が発現するリスクは避けられないのです。


肉・炭水化物・魚・野菜などのバランスがとれた食事を通じて、微細なビタミン・ミネラルを含めた様々な栄養成分をまんべんなく摂ることが、身体の全方位的な免疫力・抵抗力を高め、単一成分の過剰摂取が引き起こす副作用も防いでくれるのです。


いまの脂肪肝は「この素晴らしい総合的な防御システムを、あなた自身の手によって内側から崩しつつある状態」、とも言えそうです。

ご自身の現在の生活スタイルと食事内容を、いま一度見つめ直してみることをおすすめします。



さて、肥満がすべからく脂肪肝につながるというわけではありませんが、いずれにせよ過食は肝臓を含む体内に脂肪の蓄積をもたらすので、自分の一日の適正カロリー量を把握しておきたいところです。


成人が一日に必要とする摂取カロリーは、一般に1,600カロリー程度と言われていますが、目安として「体重1キロあたりおよそ25キロカロリー」で考えておくとよいでしょう。

たとえば体重60キロの人は、25×60=1500キロカロリーが、一日の摂取カロリー量のおおよその目安となります。


もちろん、運動によって過剰に蓄積されたカロリーを消費していくことも大切です。

脂肪肝対策としての食事療法はもちろん大切ですが、あくまで「食事療法と運動療法の二本柱」の実行が、最大の効果をもたらすことをしっかりおぼえておきましょう。

食事の内容を見直しつつ運動の機会を増やして、体重の7%程度を減量することにより、脂肪肝の状態はかなり改善してくるはずです。


最後になりますが、飽食の現代においては、脂肪肝の他にも肝炎や肝硬変、あるいは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)など、さまざまな肝臓の病気があります。

病状によっては、個々の症状に応じた特別な食事療法が必要とされるケースや、投薬治療との併用が求められることなども少なくありません。


健康診断で肝機能の異常を指摘されたときは、自己判断で食事療法にとりかかる前に、まず専門医の診察および食事上のアドバイスを受けておくようにしたいものですね。


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